豊岡演劇祭2020フリンジ

●お知らせ
フリンジ参加アーティストが決定いたしました。(7/31)

・Q&Aのページを更新しました。(7/13)

・Q&Aのページを更新しました。(7/12)



 フランスでは、すべての小学校の壁に「自由・平等・博愛」の文字が刻まれています。

 自由と平等という、ときに矛盾する概念の懸け橋に「博愛」という、なんだかふんわりしたものを置いたところにフランス革命の知恵がありました。

 

 演劇祭における「フリンジ」とは、公式に対する非公式、中央に対する周辺を意味します。フリンジの魅力は、自由にそこに集まり、また去って行く点にあるとも言えるでしょう。

 海外の演劇祭、とりわけアヴィニヨンのような大きな演劇祭は、弱肉強食の世界です。フリンジで集まった多くの集団のうち、限られた者のみが、やはり世界中から集まってきたプロデューサーやプログラムディレクターに見いだされ、他の幾多の演劇祭に買い取られていきます。逆に、観客が思うように集まらず、開催期間中に撤退していくカンパニーさえも見られます。この自由競争のダイナミズムそのものが、欧州のフェスティバルシステムの一つの魅力となっています。

 

 しかし、日本の多くの若い演劇人は、ここで疑問に思うことがあるでしょう。日本で同じことをしても、そもそもスタートラインが違うではないかと。

 たしかにアヴィニヨンのフリンジでさえも、資金力のある団体は恵まれた上演会場を占有するなどして有利に事を運ぶ傾向はあります。しかし、ヨーロッパでは、多くの場合、どんなに小さな団体でもなんらかの形の公的な支援を受けており、またセルフプロデュースやプロモーションのための教育も受けている。すなわち、実力に見合ったステップアップの道筋だけは、用意されているということです。彼我の差は、思いのほか、大きいのです。

 

 今回のウイルス禍と、その後の文化支援を巡る議論で明らかになった問題の一つは、日本の文化政策の中心が「申請主義」であり、書類の書き方がうまい、あるいは慣れている団体ほど支援を受けやすい状況にあるという点でした。これを自己責任と言うには、日本のアートマネジメント教育の環境はあまりに脆弱です。

 そこで、「進化する演劇祭」を標榜する豊岡演劇祭は、日本に、真のフリンジ型のフェスティバルが定着するまでの間、積極的なフリンジ支援、公演会場とのマッチングなどのサポートを進めていくこととしました。

 芸術の世界ですから、結果の平等はまったく必要ないと私は考えています。残酷なまでの競争と淘汰のシステム、そして、そのための場を用意するのがフェスティバルディレクターの役割です。しかし、日本において、若いアーティストたちに機会の平等を保証することは非常にむずかしい。豊岡演劇祭が、その一助になればと願っています。

 また、特に本年は、ウイルス禍で上演中止や延期を余儀なくされた団体などを優先的に支援します。もちろん、選定にあたっては、その将来性や演劇祭での上演の効果を、もっとも重要な評価の軸としますが。

 

 豊岡演劇祭は「対話する演劇祭」でもあります。公式プログラムにもいくつものカンファレンスが企画されていますが、フリンジの対象も上演だけではなくワークショップやシンポジウムが含まれます。積極的な企画の展開を期待しています。

 

 私の少ない経験においても、国際演劇祭に参加する醍醐味の一つは、アーティスト同士が友情を培う場だという点です。

 豊岡演劇祭では、国内外から集まってきたアーティスト、観客、そしてそれを繋ぐ学術や批評、ジャーナリズムの関係者が、夜には一同に集い、その日に観た舞台について語り、明日観る舞台について期待を寄せる、そんなフェスティバルカフェを開く予定です。

 豊岡演劇祭は、「進化する演劇祭」「対話する演劇祭」であると同時に、「連帯する演劇祭」を目指します。自由と平等という、ときに矛盾する概念を、私たちはアーティスト同士の「連帯」によって乗り越えたいと考えます。

 フリンジに参加するすべての団体が、この豊岡で、終生のよきライバルを見つけられることを願っています。

 

豊岡演劇祭2020 フェスティバルディレクター

平田オリザ


参加アーティスト

※新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今後内容に変更が生じる場合があります。
あらかじめご了承ください。

公演の詳細は情報が揃い次第お知らせいたします。

●演劇
うさぎストライプ
『ゴールデンバット』
劇団普通 『電話』
小菅紘史×中川裕貴 『山月記』
theater apartment complex libido:『libido:AESOP 0.9』
スペースノットブランク『ラブ・ダイアローグ・ナウ』
日坂春奈『かみしばいや』
広田ゆうみ+二口大学『いかけしごむ』
ブルーエゴナク『タイトル未定』

●ダンス
Aokid×たくみちゃん『MOVE-MOV(I)E MEN-MENT!!!!』
京極朋彦ダンス企画 『未定』
敷地理 『blooming dots』

リーディング
天明留理子(旭堂南明)『城崎で聴く怪談話』

大道芸
知念大地『続・ひしと』
塚越ピカル『Living Statue』 

フィジカルコメディ
to R mansion『DIVE/JOURNY(ダイブジャーニー)』

●フィールドワーク
山川陸(山川陸設計) 『三度、参る』 

●インスタレーション
越後正志 『観測地点』

●トーク
烏丸ストロークロック 『タイトル未定 』 

●ワークショップ
一般社団法人ダンストーク『マジな性教育マジか』by 康本雅子+池上恵一 
「老いと演劇」OiBokkeShi 『老いと演劇のワークショップ』
観客発信メディアWL 『劇評ミーティング』in 豊岡 
竹中香子『「民主的演技」を考えるワークショップミーティング』

 

●勉強会 
劇作家女子会。『劇作家による著作権との付き合い方勉強会:死後のライセンスについて』

和田華子『俳優・劇作家・演出家・制作者に向けたLGBTQ勉強会』